'Ichthys' font~From the United Kingdom
2026.05.24
サウスケンジントンにあるヴィクトリア&アルバート博物館に行くと、いつも美しくも不思議なオブジェの前で足を止めてしまいます。この透き通った石のような不思議なものは何でしょう??? いつも目に入ってしまうこのオブジェの正体、調べてみました。
製作者はコリン・リード。ガラス製作のアーティストでした。自然の岩から型を取り、幾度もの工程を経て型をまず作り上げるコリン・リード。その型にガラスを流し込み、岩のカタチをガラスで再現するというわけです。取り出したそのガラスをまた何度もの工程で研磨し、洗い、シルキーな質感の造形に仕上げていきます。これは彫刻のキャスティングと呼ばれている手法で、ガラスを鋳造したもの。その美しさはまるで氷のようです。けして解けることのないガラスでできています。
ヴィクトリア&アルバート博物館でいつも足を止めてしまうこれは、「Ichthys」 フォントというものでした。けれどそのタイトルを見てもよくわかりません。Ichthysは弧で描いた2本線で魚を表したもので、英語ではイクサスと呼ばれています。別名はジーザス・フィッシュ。どうやらキリスト教徒たちのシンボルで、迫害を恐れた時代の隠れた暗号のようなものでした。この作品にも確かに簡素化はされていませんが、6匹の魚が見えます。黒い木の台座も印象的です。
これは洗礼盤として製作されていました。確かに聖水を入れる場所もあります。聖水は1.5リットルほどの少量を用意します。洗礼はキリスト教の信者となるための儀式で、聖水を注いでキリスト教徒となります。全身に水を浸すのが正式のようですが、今では頭に水を注いだり、手で水滴を頭につけたりに変わっています。各教派によって異なっていますが、赤ちゃんが生まれると洗礼式で親戚一同が教会に集まる光景もよく目にします。ガラスで造り上げた洗礼盤「Ichthys」フォント。ガラスの透明感と光を受けた輝きが神々しく見えてきました。
コリン・ガードは魚たちからこの型を取ったのでしょうか。幅と高さがそれぞれ50センチほどの作品ですが、神聖な気持ちになってきました。ロンドンのサウスケンジントンのヴィクトリア&アルバート博物館の、莫大なコレクションのなかから「Ichthys」フォントを見つけてください。ガラスのテクスチャー、見ただけでその質感がわかるような作品、「Ichthys」フォントに目を奪われるはずです。

