Botanical Art~From the United Kingdom
2025.06.10
ボタニカルアート、植物画。昔キューガーデンの花の絵を母へのお土産に買いました。その美しい色に魅かれて購入したのですが、でもこの植物画、実は鑑賞用ではなく研究のために描かれていたものでした。
植物画は植物画家と呼ばれている人たちが描いています。芸術と科学の融合がそのスキルには不可欠です。実際に見えるものを全て正確に描きこむことが求められます。花、葉、茎の全体から、根、花弁、おしべやめしべ、花柱、子房などのパーツを一つひとつ描き加えているものもあります。植物画は写真がなかった頃の情報でした。かつて植物画は収集家たちが自分の画力で表現しています。
キューガーデンには19世紀のマリアンヌ・ノースという植物画家のギャラリーがあります。世界中を旅して多くの植物画を遺しています。父と訪れたキューガーデンで植物画と出会い興味が募ったノース。世界中に旅ができたのも、ノースが裕福な家庭に生まれ育ったからできました。父が亡くなると遠く知らない国への旅を始めます。描きためたものはキューガーデンに収蔵しそのギャラリーを建てることを申し出ます。そして1882年マリアンヌ・ノースギャラリーは完成。今でも私たちは彼女が描いた植物画をキューガーデンで観ることができます。
写真の技術が誕生してからもボタニカルアートはまだ大切な仕事として残っています。キューガーデンには日本人のボタニアルアーティストも活躍しています。2024年6月に天皇皇后両陛下がイギリスを国賓として公式訪問された時に、天皇陛下にキューガーデンで植物画の説明をされていました。日本人初のキューガーデン公認のボタニカルアーティストです。写真よりも細密に正確に描くことをキューガーデンのボタニカルアートには求められていますので、その狭き門の難関を突破した実力は確かなものです。
ボタニカルアートは分類学的な科学の目も必要です。そして画力、植物に対する造詣の深さが重なり合ってはじめてボタニカルアートは成り立ちます。学術的な画としても、部屋を彩る絵画としても、ボタニカルアートはブームになっています。