Still Room~From the United Kingdom

2025.07.09

異文化理解

イギリスのカントリーハウスと呼ばれる貴族たちの家には、さまざまな部屋がありました。サルーンと呼ばれる大広間に生活するための居間やダイニングルームに家主たちの居室に加え、ゲストのための部屋、使用人たちの部屋とそれぞれの作業を場所が必要です。そのなかのスティルルーム。いったいどんなことをする部屋だったのでしょうか。

スティルルームはその家での化学実験や調剤などを行う部屋で、香水や石鹸なども作っていたようです。薬や香水、石鹸などが店に出回るようになるとその役割はほとんどなくなります。元々厨房の役割もあり、食品などの保存の場所だったようです。やがて保存食が売り出されると次第にそれらもなくなりますが、シロップやピクルス、マーマレードやジャムなどがその家でのレシピで作られていました。

そしてイギリスでは1840年頃にベッドフォード公爵夫人が、遅い夕食時間までのつなぎのお茶と軽食の習慣、アフタヌーンティを始めます。夕方になると空腹で気が滅入っていたご婦人たちには、紅茶とティフードの提供はとても好評でした。最初はバター付きのパン程度だったティフードにやがていろいろなものが登場します。ティフードのサンドイッチやケーキがこのスティルルームで作られるようになり、紅茶の準備だけではなくティフードの仕込みと調理という大切な場所となりました。

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スティルルームの管理は上級使用人のハウスキーパー。アフタヌーンティの需要が増えるとスティルルーム専任のメイドが雇われ、アフタヌーンティ専任になったようです。スティルルームメイドはハウスキーパーの直属でしたが、有能な人材を登用したため、上級使用人のハウスキーパーへの道も開けていたようです。 イギリスの邸宅に入れる機会はなかなかありませんが、ヴィクトリア時代の室内がそのまま残っているところがあります。

それがロンドンにあるチャールズ・ディケンズ博物館。ここは文豪チャールズ・ディケンズが住んでいたテラスハウスでした。地下のキッチンの横にハーブが天井から吊るされ、ティカップが並んでいる部屋がありました。多分ここがスティルルームだったのでしょう。大英博物館から少し歩いた場所にありますので、ロンドンへお出かけの際はどうぞお立ち寄りください。

※写真のスコーンは今やアフタヌーンの定番ですが、いつ頃登場したのでしょうか。元々はスコットランドのお菓子だったようですが…