パーク?ガーデン?イギリスでパークとガーデンの違いは何?
2025.05.27
ロンドンにはハイドパーク、セントジェイムスパーク、リージェンツパーク、ケンジントンガーデン、キューガーデンといろいろな公園がありますが、そのほとんどが元々は王室のもの。そしてパークとガーデンとその名を変えているのはどうしてなのでしょう。その違いを今回考えてみました。
ハイドパーク
ロンドンで一番広い公園はここ、ハイドパーク。大きく長いロングウォーターと呼ばれる細長い池にはスイミングクラブもあります。そのスイミングクラブはイギリス最古。プールができる前からハイドパークでスイミングは始まっていたのです。広大な公園なので歩いて散策するのも大変です。
公園の北側にはどこかで見たことのある池と建物を見つけます。そこはイタリアンガーデン。映画「ブリジット・ジョーンズ」の何作か目のシーンで、コリン・ファースが演じるマーク・ダーシーと、ヒュー・グラントが演じるダニエル・クリーヴァーが、ブリジットを巡って大げんかする場所でした。でも、ここはもう隣のケンジントンガーデンに入ってしまっているようです。水辺をずっと歩いていったらそこにたどり着いてしまいました。
セントジェイムスパーク
セントジェイムスパークはバッキンガムパレスのすぐそば。季節の花々を楽しめる公園です。春になると咲き出す花たち、スイセン、チューリップが咲き、初夏から夏にかけてタチアオイやバラが咲いていた覚えがあります。セントジェイムスパークも水辺があり、その真ん中にブルーブリッジがあります。このブルーブリッジは絶好の写真スポット。橋からは遠くですが、ロンドンアイの観覧車も臨めます。水辺の植物も美しく、水鳥たちも憩っている場所です。
セントジェイムスパークはロンドン最古の王室の公園。ヘンリー8世がこの沼地だった場所を購入します。セントジェイムスの名はバッキンガムの名より早くあったようです。公園を抜けた北の大通りの先には元々王室の居城のセントジェイムスパレスがあり、今でも王室メンバーがお使いになっています。セントジェイムスパレスのお隣のクラレンスハウスを、チャールズ3世が今お住まいとされています。王室に一番近い公園、それがセントジェイムスパークです。
リージェンツパーク
ここも王室縁の公園で、またヘンリー8世が出てきます。鹿狩りのためにヘンリー8世が購入した敷地は、昔メリルボーンパークと呼ばれていたそうです。リージェントは摂政の意味で、君主が幼いか老齢で公務に就けない時に、代わって公務を代行する後継者などを指す言葉です。その時の摂政の王太子はジョージ4世。父のジョージ3世の治世が長過ぎたため公務を代行し、その時代をリージェンシーと呼び、その時代の文化や流行などにその名が冠されていました。
でもこのリージェンツパーク、公園として開園された頃にはもうヴィクトリア女王の時代。どうやらリージェントだったジョージ4世がこの地に宮殿の建造の計画をしていたので、その名になったようです。ロンドンの北部に位置するリージェンツパーク。映画「ハリーポッターと賢者の石」にも登場するロンドン動物園も有しています。広大な公園の見所は他にもたくさん。3万本が咲くローズガーデン、野外劇場、運河と、またその北側にはロンドンを一望できるプリムローズヒルにつながっているので、丘まで昇ると1日では周り切れないかもしれません。
ケンジントンガーデン
ケンジントンガーデンは広大なハイドパークの隣。元はヘンリー8世の狩猟場でした。やがて王族たちの住まいとなるケンジントンパレスとなりますが、元はノッティンガム伯爵の邸宅があった場所。ここに最初に住んだのはイングランド国王ウィリアム3世で、喘息のため中心部から離れた住まいに移りたかったようです。ケンジントンガーデンはロンドンの中心部から西に位置し、ラウンドポンドと呼ばれるその名の通り丸い池には水鳥たちがたくさん集まってきます。
ケンジントンガーデンはまたピーターパンの舞台。この近くに住んでいた作家ジェームス・バリーが、ここで赤ん坊のピーターパンがいなくなってしまうお話を考えます。乳母車に乗っていたピーターパンは迷子になり、歳をとらない、大人になれない、少年のままのお話はケンジントンガーデンから始まるのです。そしてもう1人、美しいまま時間を止めてしまったのは、ダイアナ元皇太子妃。ケンジントンガーデンにはいくつものダイアナ妃の名が残されています。お住まいだったケンジントンバレスのメモリアルガーデンには、少年と少女たちといっしょにいるダイアナ妃の像が建てられました。緑と白いマーガレットの花、青いワスレナグサ、紫のラヴェンダーがその像の前をとり囲んでいます。それはもうダイアナ元皇太子妃が、向こう側の世界の人になってしまったことを教えてくれる景色でした。
キューガーデン
キューガーデンは正式にはロイヤルボタニックガーデン・キュー。王立植物園のキューガーデンは、2003年世界遺産に登録されました。ロンドンの南西部、中心部から地下鉄で30分くらいの場所にあるので、1日遊んで日帰りできます。行くなら5月から6月の薔薇のシーズンがおススメです。地下鉄キューガーデン駅に出ると線路の向こう側がキューガーデンで、徒歩7・8分ほど歩きます。みんなが歩いている方についていくとヴィクトリアゲートに到着。中に入るとすぐに大きな温室、パームハウスが迎えてくれます。
実は最初に行ったのが8月。日本では夏休み真っ盛りですが、キューにはもう花がほとんどありません。それでも暑くも寒くもないキューで半日以上ゆっくりと歩きます。その広大な敷地は121ヘクタール、東京ディズニーランドとディズニーシーを合わせても足りないくらいです。半日かけても周りきれません。それでももう1つの温室テンパレイトハウスを抜けて、西の端にあるライオンゲート近く、パゴダと呼ばれると高い仏塔を模したところ近くまで行った覚えがあります。脚はとても疲れましたが、ところどころにメモリアルのベンチがあります。ベンチで休みながら、背もたれのプレートに記されたキューを愛した人たちの言葉を読んでみてください。
パークとガーデンの違いは…???
ロンドン近郊のパークとガーデンをご紹介してきましたが、ではパークとガーデンの違いって何でしょう。ご紹介した場所は全て王室のもので、ロイヤルパークスのインスタグラムで素敵な写真や動画があがってきます。ハイドパーク、セントジェイムスパーク、リージェンツパーク、ケンジントンガーデン、キューガーデンの他にロンドン中心地にあるグリーンパーク、郊外のグリニッジパーク、リッチモンドパーク、ブッシーパークがあります。 ガーデンがつくのはケンジントンとキューだけです。でも気づいてしまいました。どちらにもパレスがあるのです。ケンジンパレスはその昔はメアリ2世とその妹のアン女王、ジョージ1世とジョージ2世の親子と、その後ヴィクトリア女王もお住まいで、近年はウィリアム皇太子のご家族がケンジンパレスをお住まいにされていました。今でも王室のどなたかがここに住んでいらっしゃるようです。
キューパレスはとても小さく離宮でと呼ばれるものでした。現存している建物は4階建てで、とてもこぢんまりとしています。当時はいくつかのパレスがあったようですが、今はダッチハウスと呼ばれる赤レンガのものだけ。ジョージ3世の一家が夏に過ごすパレスとなり、この場所を気に入っていたようです。やがて時代は変わりキューパレスを取り壊すことも検討されましたが、今私たちは当時の姿に近いキューパレスを見ることができます。
リッチモンドパークにもパレスがかつてありましたが、今はありません。今パレスが現存している場所をガーデンと呼んでいるのだと思われます。でももしキューパレスが壊されてしまっていたら、キューパークだったのでしょうか。何だか語呂が悪いようで、キューパレスが遺された意味があったように思われました。
※写真はシェーンの幼児レッスンのアイコンにもなっているピンクのカバのチャーリーとケンジントンパレス、キューガーデン内のキューパレス。