Quintin Hogg Memorial Statue~From the United Kingdom

2025.11.24

英国史雑学

ロンドンの公共放送局のBBC先、ポートランドプレイスへ向かっていた時です。通りの真ん中に本を読む紳士と少年らしい人物の銅像を見つけました。台座にはQuintin Hogg-クインティン・ホッグの名があります。クインティン・ホッグとはいったい誰なのでしょう???

クインティン・ホッグは1845年の生まれ、男爵家の7番目の息子として生まれました。イートンカレッジで学び、フットボールの選手として活躍したそうです。卒業後は貿易の仕事に就き、茶と砂糖の売買をしていました。仕事は成功し、財を成したホッグは慈善活動に矛先を向けます。当時のロンドンでは貧しい生活を強いられている人が多く、勉強がしたくても生活のために働かなければなりません。

ホッグは教育改革を後押します。先人たちが築いた貧困児童のためのラギットスクール-ぼろぼろの学校を1864年に1校創設し、貧しい子どもたちでも無償で通える教育の場を広げます。夜間でも学べる場を提供し、子どもたちの教育の芽を摘むことがないよう、働きながらも学べるよう整備していきました。労働者、特に機械工の教育の場を欲していた時、1881年に王立の工科大学が閉鎖されてしまいます。ホッグは同年の12月に15000ポンドで建物の賃借権を得て、翌年の9月には大学を再開。そこには予想を上回る大勢の学生が押し寄せます。

学びたくても学べない、そんな少年たちのために門戸を開いたホッグ。ポートランドプレイスの像の台座にはいくつかの碑文が記されています。正面にはこう記されています。

  • Quintin Hogg Memorial Statue~From the United Kingdom

Quintin Hogg, 1845 - 1903.
Erected by the members of the polytechnic to the memory of their founder
クインティン・ホッグ 1845-1903
工科大学のメンバーが創設者を偲び建てた

左の台座には妻のアリスを讃える碑文が、右の台座には祖国のために犠牲を強いられた工科大学の学生たちへの碑文が続きます。2度の世界大戦で学びの場を失われた学生たちへの追悼もこの像には込められているようです。貧困と戦争は今でも世界中の問題。そこに将来のある子どもたちの犠牲が強いられてはいけません。

ポートランドプレイスはとても広く美しい通り。観光スポットではないのですが、こんな歴史の一端をのぞかせてくれる像があったとは知りませんでした。ホッグの持つ本を興味深くのぞき込む少年と、その本を読み上げているホッグの言葉を注意深く聞き入る少年。子どもたちの将来が開かれる世を願ってやみません。