LAPHROAIG~From the United Kingdom
2025.10.10
初めてこのウイスキーを呑んだ時、何て強い香りと味がして不思議な気持ちになりました。人によっては正露丸みたいとも言いますが、この香りと味の深みにはまってしまいます。このウイスキーはラフロイグ。スコットランドの離島で、気の遠くなるほど長い時間をかけたものを使って、そのウイスキーは造られていました。
その長い年月を経たものはピート-草炭です。かつてその地で咲いていた植物が土の中で炭化したもの、ピートで薫りづけした大麦でラフロイグは造られます。その島のピートはヘザーと呼ばれる花たちの何千年後の姿です。紫の小花が地面に這うように咲き乱れるのが、夏。ヘザーの甘い香りが漂う美しい光景、荒れ地の夏を美しく彩っています。でもヘザーが地中で炭化するには長い年月を要します。ピートは島の財産で、島の人々はピートを切り出し、暖炉の燃料としても使っています。
ピートも限りのある資源です。それでもラフロイグのウイスキーには欠かせないもの。ピートで薫りづけられたモルトは、蒸留され白い酒となります。それを樽に詰めて長い年月寝かせます。5年、10年、20年と樽は海の近くの倉庫で眠っています。この間にアイラ島のseaweed―海藻、 tar―黒い油分のある液体、 そしてiodine―ヨウ素の香りたちが、ラフロイグを育んでゆきます。大切な1杯は途方もない年月の産物でした。
島の建物はみんなきれいにペンキが塗られています。ウイスキーの仕込みがない夏の時期は暇なので、ペンキ塗りに励むそうです。
ロンドンまで半日以上のフライトを経て、スコットランドのグラスゴーへ、それから小型機でアイラ島にたどり着きました。とても遠い場所でしたが、ラフロイグをあの島で味わうために出かけた旅。アイラの自然と空気、そして海、ラフロイグを愉しんだ数日間は、かけがえのない大切な時間になりました。