Osborne House~From the United Kingdom

2025.06.02

英国史雑学

オズボーンハウス。とてもリズミカルな名まえの家です。オズボーンハウスはイギリス南部の島、ワイト島にある王室のかつての離宮。建てられたのは19世紀の半ばで、ヴィクトリア女王が好まれてお使いになっていました。

  • Osborne House~From the United Kingdom

オズボーンハウスの設計は女王の夫君のアルバート公。ステートルームと呼ばれる客間、女王夫妻の9人のお子さま方と過ごしたファミリールームなどがあり、アルバート公のプライベートのスィートには今でもお使いになっていた愛用品が残っているそうです。女王夫妻はワイト島の美しい海と風光に魅かれました。ヴィクトリア女王も海水浴をここで楽しみ、泳ぎの練習もされていたそうです。ヴィクトリア時代の女性は肌の露出を避けるため、海水浴はベージングマシーンと呼ばれる馬車の中から海に入っていきます。かつてはプライベートビーチでしたが、女王の名を冠したクィーンヴィクトリアビーチで、今では私たちも海水浴を楽しむことができます。

9人の王子と王女たちが楽しんだのは海だけではなく、スイスコテージと呼ばれるお子さま方のための家でした。コテージの横には家庭菜園が造られガーデニングを楽しみ、採れた野菜をあるアルバート公に売ったり、その野菜使って料理を作ったりします。また女王夫妻を招いて、アフタヌーンティの準備をお子さま方だけでします。女王夫妻はお子さま方にも王室の生活だけではなく、日常の生活を十分に知ってほしい願いを込めて、スイスコテージを建てられました。スイスコテージは解体されて、今では違う場所に建て替えられているようです。

1901年1月22日、20世紀を迎えたばかりのオズボーンハウスの丸い角の居室で、女王は最期を迎えられました。ヴィクトリ女王が崩御されると、即位した息子のエドワード7世は女王の遺言も虚しく、オズボーンハウスを国に寄付してしまいます。今ではイングリッシュヘリテージが管理し、春から秋まで一般公開しています。エドワード7世のおかげで、女王一家のかつてのご様子を感じることができる機会が持てました。ワイト島にはロンドンから列車を乗り継いで3時間半あまり。車での日帰りツアーは14時間ほどだそうです。機会があればぜひ訪れてみてください。