Water House~From the United Kingdom

2025.08.14

英国コラム

その場所へ初めて出かけたのはもう20年も前のこと。半分仕事を兼ねたロンドンへの旅の、最初の2日間が自由に行動できる予定です。金曜日のフライトで同日ロンドン着、さて翌日の土曜日に向かったのが、ウォルサムストウ。その駅にウィリアム・モリスが青年の頃に住んだ家があったのです。

意匠家・工芸家のモリスは1834年にこのウォルサムストウで生まれます。父は金融の仕事をしていて、裕福な家庭環境で育ちます。生家もウォルサムストウにあったようですが、現存しているのはウォーターハウスと呼ばれる青年時代に住んだ家だけ。そのウォーターハウスが今、ウィリアム・モリス・ギャラリーになっているのです。

  • Water House~From the United Kingdom

地下鉄オックスフォードサーカス駅で、ヴィクトリア線に乗り換えてウォルサムストウに向かいます。ロンドンの北部にあるウォルサムストウまでは30分前後、地下鉄の終点、ウォルサムストウ・セントラルという駅に向かいました。土曜の昼とは言え、車内の人は少なく、途中のセブンシスターズという駅で人は降り、残った乗客は怪しげなおじさんだけ。思いきってその駅で一番前の車両に移ります。ロンドンの地下鉄では走行中に、車両を移動してはいけないので、駅で移動するしかないのです。何かあったら地下鉄の運転士に助けを求めるしかありません。やっと終点。初めて来た駅と街です。

駅を降りるとすぐに変な輩に声をかけられますが、いつもの聞こえないふり。駅前にはマーケットがあり、土曜日の活気を呈しています。さてウィリアム・モリス・ギャラリーはどこでしょう? 場所も知らずに出かけてしまう度胸は、方向音痴ではないからでしょうか。でも駅の北も南もわからず、さて歩いていると、図書館のバナーにモリスの顔があるではないですか。すかさず図書館に入ると、モリス・ギャラリーのリーフレットがあります。何とラッキーなことでしょう。モリス・ギャラリーへの道はつながりました。駅から徒歩20分ほど、鉄柵と煉瓦の重厚な門が迎えてくれました。3階建ての円形を取り入れた瀟洒な邸宅は、独特な佇まいです。

写真のこの門は今はもう、なくなってしまったそうです。モリス・ギャラリーのかつての佇まいをどうぞご覧ください。