Glove~From the United Kingdom

2025.12.12

英国コラム

女性たちが外出する時の必需品にグローブがありました。野球のグローブではなく、手袋です。今は寒い時か、ゴルフプレイでしか使わなくなったグローブですが、フォーマルな席での手袋は必需品です。19世紀のエチケットは散歩でもお茶の時間でも、手袋の着用は淑女たちの証。手袋をせず、素手でいることははしたないことと言われ、手袋をすることは家事をしないことの証拠でもあったようです。

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女性の場合はお食事中以外でも手袋のままでOK。握手も手袋のままで大丈夫です。また礼装している男性は手袋を右手に持たなければマナー違反。右手に手袋していることで闘いをしないことを示しているようです。イブニングのドレスではロンググーブは欠かせません。オードリー・ヘップバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」での、黒いドレスと黒いロンググローブがとても素敵でした。今ではそんなにドレスコードは厳しいところはなくスマートカジュアルになっていますが、オペラやバレエ、音楽会のかつて夜の開演のドレスコードは女性はイブニングドレスにロンググローブの着用だったようです。

上皇后の美智子さまはかつてご婚約発表の際に、アイボリーのドレス白いドレスに羽根帽子、手にはミンクのストールを持って登場されました。その時に肘丈の手袋を着用されましたが、口さがない人にはその手袋の短さを揶揄されたようです。その手袋は東宮御所から届けられたものでした。昭和の中頃の洋装流行の時代になっても、なかなか日本でロンググローブを見つけることは難しかったうえに、肘が隠れるまでの作法というものも特になく、その時分の流行りの長さでもあったようです。

イギリスのウースターシャーに手袋で有名なデンツ社があります。1777年創業のこの会社は大勢の職人たちが手で1つずつ丁寧に手袋を作っています。今は冬だけの手袋ですが、淑女気取りでワンピースにレースの手袋も素敵ですね、ああ、でも違います。今は医療用の手袋が感染症予防の必需品になり代わってしまっています。グローブは今や医療にはなくてはならないもの。手元を美しく見せるためものが、直に触れないことへと変化してしまっています。

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