Highland~From the United Kingdom

2023.10.23

英国コラム

ハイランドはスコットランドの別名と思っていた浅はかな知識のままでいたので、これからスコットランドについて勉強しようと決めました。ハイランドはウィスキーの名にも冠されていますが、ローランドという地域もスコットランドにはあったのです。今回はスコットランドのハイランドをご紹介しましょう。

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ハイランドはイギリスのスコットランドの北東部。手つかずの自然に抱かれています。ネッシーで有名なネス湖もハイランド、「命の水」を意味するウィスキーのハイランドモルトも造られています。ただしハイランドとローランドは南北に分かれているのではなく、北東と南西にその線引きがあるようです。スコットランド東部の南北に広がるオークニー諸島はハイランド地方に属し、イギリス王室所有のバルモラル城はローランドに属しています。なかなかその境界、自治体、地方としての固有名詞のボーダーは複雑なようです。

広義としてのハイランド地方(Highlands)には、映画ハリー・ポッターシリーズのホグワーツ魔法学校で登場するグレンコーの渓谷、そしてホグワーツに向かう列車が走るグレンフィナン高架橋があります。雄大な自然を抱くドラマチックな風景が、ハイランド地方の見所です。山がほとんどないイギリスですが、ハイランド地方はイギリス最高峰のベンネヴィス山も擁しています。イギリスの高地、まさにハイランドの名にふさわしい場所です。ただその最高峰は1344メートル。イギリスで山を探すのは難しいわけです。

そしてハイランドウィスキー。イギリスのスコッチウィスキーは世界5大ウィスキーの頂点に輝いています。スコッチウィスキー製造の技術を身につけたジャパニーズウィスキーも最近の評価は上がっています。ウィスキーは白く蒸留した原酒を、樽の中で気が遠くなるほどの長い時間熟成し、琥珀色に変えていきます。樽の中のウィスキーは熟成が進むとその量は少し減っていきます。昔のウィスキー職人たちはその樽には天使がいて、このウィスキーを呑んでいると噂し合いました。でなければこんなに美味しいウィスキーをつくることはできないはずだと。そして彼らは目減りした分のウィスキーを―Angel’s Share―天使の取り分と呼びました。

余談ですがジャパニーズウィスキーの開拓者の竹鶴政孝氏は、ウィスキーの納税は熟成後の分量、庫出税にしてほしいと何度も政府にかけあったそうです。樽から目減りした何パーセントかのウィスキーまで課税されては確かにたまりません。それでなくても何年、何10年と熟成をひたすら待つウィスキー。ビジネスとして最初の10年近くはほとんど利益が見込めません。

ハイランド地方にお出かけの際は、その場所でしか味わえないウィスキーをぜひお試しください。ちなみにイギリスのウィスキーの綴りはwhisky。アメリカのとうもろこしから造られるバーボンなどはwhiskeyと綴られます。語尾がkyがイギリス、keyがアメリカと覚えてください。ジャパニーズウィスキーはスコットランド直伝ですのでeは入りません。