Grand Tour~From the United Kingdom

2022.11.20

英国史雑学

17世紀から19世紀にかけてイギリスではグランドツアーが流行りました。グランドはヨーロッパ大陸のこと。イギリス貴族の子息や貴顕社会の子息たちが、見聞を深めるためにヨーロッパ大陸の国々へ旅することが流行ります。それがグランドツアーと呼ばれます。イギリス貴族の子息や貴顕社会の子息たちが、家庭教師たちから受けた教育の総仕上げのために実際の目で見て確認するというもので、視察と言う名の若き青年たちの体験旅行です。 

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特にこのグランドツアーではイタリアへ行くことが多く、ルネサンス期に描かれた名画や、歴史的建築建造物に触れて、良家の子息たちの教育の仕上げをしました。イギリスは島国のためヨーロッパ大陸の人々は異なった意識もあったようです。面白いエピソードがあります。ある18世紀のイタリアの画家は、150人以上ものイギリスからのグランドツアーの子息たちの肖像画を描いたそう。肖像画を仕上げてもらっている間の滞在ですから、子息たちはどのくらいその場にいたのでしょうか。お金持ちたちの旅行ですから、滞在した土地では経済効果をもたらします。また肖像画の発注が無理なら、訪れた土地の風景画を購入したというわけです。イギリスの邸宅にはそうやって集めた滞在先の風光明媚な画が飾られます。特にイタリアのヴェネツィアの画が人気だったようです。また装飾品や調度品を求め、帰国後はそれらも彼らの邸宅を彩ります。

子息たちは家庭教師や目利きの鑑定士のような人たちも連れ歩いたようです。何カ月も何年もかけてヨーロッパ大陸を旅行する子息たち。訪れた土地の人々は大歓迎といったところでしょう。それにしてもお坊ちゃまたちだけの旅行というのは、今では時代錯誤な話です。それでも世襲制のイギリス貴族の継承は男子優先のままなので、仕方はないのかもしれません。2011年にはイギリス王室は直系の子孫から君主となる者は男性女性の区別を問わなくなっています。イギリス貴族の後継ぎも変わっていくのでしょうか。

余談ですが、日本の長崎市のご出身の作家カズオ・イシグロ氏は、一代限りのナイトの称号を授与されています。Sir Kazuo Ishiguroであり、ノーベル文学賞受賞者。でも残念ながらイギリス国籍で、日本に居たのは幼児までだったので、日本語はあまりお話にはならないようです。

※写真はグランドツアー人気の地、現代のヴェネツィアです。