Victorian Afternoon Tea 再現!! 19世紀のアフタヌーンティ

2023.02.11

英国食生活

ロンドンの地下鉄、サウスケンジントン駅の近くにあるヴィクトリア&アルバート博物館。ここの博物館の収蔵品も特筆すべきですが、このヴィリトリア&アルバート博物館のアフタヌーンティもとても人気のメニューです。その名もヴィクトリアンアフタヌーンティ。ヴィクトリア時代の味を再現しているアフタヌーンティだそうです。3段トレイに乗ったアフタヌーンティなのでしょうか。どんなアフタヌーンティか興味が募ります。




最初にヴィクトリア&アルバート博物館をご紹介しましょう

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このヴィクトリア&アルバート博物館は、1851年に開催されたロンドン万博のコレクションを収蔵するために建てられました。工芸家・意匠家でもあるウィリアム・モリスをはじめ、ジェームズ・ギャンブル、エドワード・ポインターらによって、来場者が休憩できる美しい部屋を1868年博物館内にオープンさせます。高い天井、装飾を凝らした柱、色彩豊かなタイル。そこはティルームとは呼べないほどの豪華さです。初めてこのティルームを訪れた昔、こんな豪華な場所でそれほど高くない紅茶とキッシュを食べた記憶があります。

今ではモリスルームと呼ばれる部屋でのヴィクトリアンアフタヌーンティが、毎週金曜日の13時から19時まで予約制でいただけます。落ち着いたグリーンの壁紙、ステンドグラス、シンプルだけれど手の込んだ照明と天井画。以前キッシュをいただいた部屋はもっと明るかったので、あの部屋はギャンブルルームだった気がします。モリスルームは少し暗めの部屋。ヴィクトリア&アルバート博物館を久しぶりに訪れ日は水曜日の午後。アフタヌーンティの日ではありませんが、カフェはどこも満席で入ることはできませんでした。今やヴィクトリア&アルバート博物館は、カフェの人気が高く、早い時間の利用が好さそうです。


アフタヌーンティのトレイの上には…

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アフタヌーンティは3段のトレイが定番。今や世界中のホテルのティタイムに用意されているメニューです。ジャカルタの高級ホテルでもいただきましたが、そのお国柄のものが供され、イギリスでいただいたものとは違っていました。伝統のアフタヌーンティは、スリーティアーズと呼ばれる3段トレイ。その1番上には甘いケーキなどのお菓子、2段目にスコーンとクローテッドクリームとジャム、3番目にはサンドイッチなどの甘くないティフードが置かれています。お店によってはこの順番は変わります。なぜアフタヌーンティが3段トレイになったのでしょうか… 

その理由は多分給仕しやすく、見栄えの好いものだったからのようです。たくさんのお皿をテーブルに給仕するのもなかなか大変なこと。誰がいつ始めたのか、もっと調べてみることにします。でも家庭で3段トレイを使っていただくことはあまりなさそうです。やはりホテルの発想なのでしょうか。 アフタヌーンティをいただく際のマナーも、食べる順番もそれぞれのお好きなようにと思いますが、やはり最初は1番下のサンドイッチから。今ではフィリングでいっぱいのサンドイッチも多いようですが、ひと口でいただけるフィンガーサンドイッチが好きです。中身は胡瓜だけのサンドイッチ、サーモンだけのサンドイッチがほしいところですが、今はなかなか見ることはありません。

前回ロンドンでいただいた時は小さなヨークシャープディングらしいものもついていました。そして次はスコーン。このスコーンにはいただく時のマナーがあります。なるべくナイフは使わないで手で横に割っていただきましょう。スコーンはスコットランドの戴冠式で使われる玉座の石とも言われています。聖なるものにナイフは禁物というわけです。また横に割ったスコーンにジャムから塗るか、クローテッドクリームから塗るか、これも地方によっては異なるそうです。クローテッドクリームの産地のデヴォンではクリームから、南のコーンウォールではジャムからつけるそうですが、コーンウォール公爵はクリームからというお話も聞こえてきます。コーンウォール公爵はチャールズ皇太子。ちなみにエリザベス女王はジャムファーストだそうです。

紅茶は先にミルクか、後にミルクかの論争もありましたが、好きなようにいただけば美味しくなります。ただあまり高級な場所でミルクを先に入れると… 目の色が変わる方もいらっしゃるかもしれません。Oh, dear.


実際のヴィクトリアンアフタヌーンのメニューをご紹介

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ではヴィクトリアンアフタヌーンティはどんなものなのでしょう。ヴィクトリア&アルバート博物館の毎週金曜日の1時からの提供ですが訪れたその日はなく、メニューボードで見たある日のヴィクトリアンアフタヌーンティをご紹介します。そこには供されたそれぞれの年代も記されています。

1890年クレイフィッシュとマヨネーズのサンドイッチ
1861年 インディアンハムサンドイッチ
1859年 ビートン夫人の胡瓜のサンドイッチ
1888年 キンレンカのオープンサンドイッチ
1901年 アスパラガスとパルメザンチーズのタルト


1890年 フルーツを使ったスコーン
1901年 ヴィクトリアサンドイッチ
1887年 グースベリータルト
1891年 冷たいオレンジケーキ
1895年 レモンとシードケーキ


そして紅茶はイングリッシュブレックファストテイ、アールグレイ、アッサム、ダージリン、エルダーフラワーとレモン、ジンジャーとレモンから選びます。ビートン夫人はヴィクトリア時代の主婦のカリスマで、さまざまなレシピ、テーブルセッティングなどを世に広めた人で、その夫人のレシピの胡瓜のサンドイッチというわけです。またキンレンカは植物で葉を欧米では食すようです。ヴィクトリアサンドイッチはパンのサンドイッチではなく、ヴィクトリア女王がお好きだったケーキ。スポンジケーキにジャムを挟んだシンプルなもので、ヴィクトリアスポンジとも呼ばれます。

ヴィクトリアアフタヌーンティは、セイバリーと呼ばれるサンドイッチ類とスイーツの構成です。作られたそれぞれの年代もわかり、ヴィクトリア時代の食も堪能できそうです。このヴィクトリアンアフタヌーンティはお1人様30ポンド、約4500円、シャンパン付きで38ポンドでした。

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しかしこの予約方法が難しいようです。ヴィクトリア&アルバート博物館のウェブから予約フォームはなく、メールでのやりとりの予約のようです。でもこんな貴重なアフタヌーンティです。メールのやりとり、ぜひ挑戦してみてください。ロンドンのアフタヌーンティの予約は必至です。観光シーズンは何ヵ月も前から予約でいっぱいです。余談ですが、ハリー・ポッターのユニバーサルスタジオの予約もお早めに。半年前以上からロンドンに行く予定だったのに、2ヵ月前でも予約は取れませんでしたから。


ランガムホテルがアフタヌーンティ発祥???

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前回のロンドン滞在中のアフタヌーンティ選びはいろいろと目移りし、なかなか予約に至りませんでした。また食べたいアフタヌーンティ。それは昔ランガムホテルでいただいたものです。この時は1番上にスコーンが4つ、2段目に小さなケーキ8種、そして1番下のサンドイッチは胡瓜だけ、卵だけ、サーモンだけのフィンガーサンドイッチ。紅茶も美味しく、フィンガーサンドイッチも理想的でした。またスコーンにつけるクローテッドクリームの豊潤な味わいが忘れがたいものでした。ただ小さなケーキが極甘で、シュークリームかと思ったら皮は砂糖の塊。いやいや、これも懐かしいロンドンの味としっかりと舌が覚えています。

後で知ったのですが、このランガムホテルがアフタヌーンティ発祥とのこと。パームコートと呼ばれるアフタヌーンティをいただいたところでは、2人用のティテーブルと椅子に案内されました。宿泊していた6階の部屋からリフトでグラウンドフロアに降りてすぐの扉を開けると、パームコートだった覚えがあります。

とかくお高くて格式あるホテルは広い空間は扉の向こうで、ランガムホテルのかつてのレセプションはエントランスの階段を上がった先に、さほど広くないところにあったと記憶しています。レストラン、ティルームはもちろん、リフトの中の装飾も見事なランガムホテルに過ごせたのも仕事とはいえラッキーでした。ランガムホテルは1865年にグランドホテルとして開業。開業当時からアフタヌーンティを振る舞い、人気を博したそうです。ここにもまさにヴィクトリアンアフタヌーンティが存在していたのです。

土曜の午後のランガムホテルで、派手な帽子のアフタヌーンドレス姿のご婦人たち、シルクハットの姿の紳士たちがバンケットルームに向かうのか、大勢の紳士淑女の皆さんが次から次へと登場してきたことがあります。ザ・英国のお金持ちたちを目の当たりにすることができました。アフタヌーンティは元々、社交的なイベントのようです。あの方たちもあの日同じアフタヌーンティを召し上がったのでしょうか。ここに1週間泊まったあの時間とアフタヌーンティをもう一度いただきたく。今のランガムホテルではなく、昔のランガムの時間に戻りたいと願うばかりです。

※写真は最近のランガムホテルの外観。外観は変わっていないようですが、中は変わったのでしょうか。自分のお金で泊まるには財力が必要です。