Come and visit TATE BRITAIN-William Holman Hunt(1827–1910)

2021.06.29

英国史雑学

英国の画家と作品をどのくらい知っていますか?
最初に絵画を見た時の無垢な感動。それを大切にして美術館に足を運んでみましょう。
ここではロンドンにあるテート・ブリテンが収蔵する作品をご紹介します。詳細はhttps://www.tate.org.ukをご覧ください。

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ラファエル前派の3人の画家のひとり、ウィリアム・ホルマン・ハントは、最後まで派の理念に忠実だったと言われています。キリスト教を主題にした作品が多く、エルサレムを何度も訪れたのも、その風土を忠実に再現したい思いが強かったのでしょう。

ここでは宗教画でも、肖像画でもない、何気ない日常を描いた1枚をご紹介します。「The Awakening Conscience」は若い愛人を囲っていると思われる紳士の画。

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その女性が愛人だと推測できる理由に、女性の束ねていない下した髪です。現代では長い髪もそのままにする女性が普通ですが、ヴィクトリア時代のこの時代は、束ねるのが当たり前。髪を下ろすのは、髪を洗う時とベッドの中だけでした。ちょっとふしだらな髪型のまま、女性は椅子に座った紳士に抱きかかえられています。しかし何かを思い立ったように立ち上がります。紳士は「どうした?」と言わんばかりの破顔で、彼女の後姿を見ています。彼女はカゴの中の鳥。でも彼女は何か思い立ったように、その遠くに視線を注いでいます。彼らふたりの後ろには鏡があり、彼女の視線の先を教えてくれます。窓の外、木々の緑と塀らしきもの。彼女はその外に出たいのかもしれません。

でも画には暗示が隠されています。テーブルの下には飛べない鳥を右手で押さえて女性を見上げる猫。その猫はまるで「お前さんもこの鳥と同じだよ」と彼女に告げているようです。床の紳士の手袋、光を浴びる絡まった糸。それは彼女が望んでいる世界には行けないことを表しているようです。この油彩画はロンドンのテート・ブリテンにあります。

The Awakening Conscience
William Holman Hunt(1827–1910)