Drinking from Saucers~From the United Kingdom
2026.01.30
「紅茶を受け皿で」は小野二郎氏の本で、その言葉を知りました。学生時代にイギリス美術を専攻していたので、イギリスに関わる本に目を通そうとしていた時に見つけた1冊です。知らなかったイギリスの話がその著作の中で紹介されていました。でもそのタイトル、ほんとにはかつての紅茶の飲み方だったとは… それは知りませんでした。
紅茶は17世紀中頃にイギリスに入りましたが、最初は緑茶。王室にはチャールズ2世の細君のキャサリン王妃が、ポルトガルから紅茶を飲む習慣を伝えました。そのうちにイギリスの貴族たちが出入りしていたコーヒーハウスでも飲まれるようになります。当時は貴重な砂糖をたくさん紅茶に入れて飲むことがステイタスの現れだったそうです。それもカップにスプーンが立つほどだったとか。でもこの砂糖でいっぱいの紅茶はソーサーでは飲めません。18世紀になると発酵した紅茶となり、その人気は高まっていきます。
かつての紅茶を飲む絵画などで、確かに紅茶をカップからソーサーに注いでいるものを見つけました。ソーサーに入れて飲むもの、それが紅茶だったようです。紅茶はポットを火のかかったヤカンに近づけて淹れるほど、熱い湯と茶葉のインパクトを大切にします。だからなのでしょうか。でもちょっとお行儀が悪い気もしますが、理由がありそうです。
紅茶を入れて飲むソーサーは少し丸みを帯びています。そしてカップには持ち手がないのです。だからなのでしょう。ボウルでは熱くて飲めなかったのかもしれません。1740年代には持ち手のついたティカップとソーサーが登場しました。それでも持ち手があってもソーサーに紅茶を移す習慣は残り、1761年の上流階級の画や1877年のティルームでのイラストに、紅茶をソーサーに入れ飲んでいるものを見つけました。ソーサーがまだ深めだからできたようで、また中国から伝わったティボウルのこだわりもあったようです。
けれど19世紀半ばにはもうそんな飲み方はなくなっています。紅茶をソーサーに入れて飲み始めたのは、どうやらオランダやロシア辺りで流行ったものだったようです。それでもコーヒーより紅茶を愛飲したイギリスの人たち。「紅茶を受け皿で」の著者小野二郎氏も、イギリスの片田舎で見かけたその作法に興味を持ち、本のタイトルにしました。確かに奇異な作法ですが、本のタイトルとしてのインパクトはあったようです。

