Chop Room~From the United Kingdom
2025.09.17
ロンドンのその古いパブは大きな通りを少し入った路地に入口があります。もっと昔からあったようですが、ロンドンは1666年に大火事に見舞われてしまいました。そのパブは1667年に建て替えられたと看板に記されています。入口には再建されてからの歴代の君主の名が並んで、歴史あることを伺わせています。
10数年ぶりに再会するイギリスの友人たちとの待ち合わせがその古いパブでした。そのパブのサイトを見ると広く、いろいろな部屋があったので、さてどこで待っているのか、重厚な扉を開けるまでわかりません。扉を開けるとパブのスタッフがいて、入口の左側の部屋を指し示します。久しぶりに会う友人たち、でも変わってはいません。彼らと再会した部屋がチョップローム。どうやらこのパブのダイニングルームだったようです。
この部屋には暖炉があり、かつては白いテーブルクロスが敷かれ、テーブルにはナフキンとナイフフォークが並び、パブとは思えない黒服の給仕の男性たちがいました。暖炉は奥にありましたが、その時は夏だったので火は入っていません。暖炉の上に鏡、そしてその左に男性の肖像画。どこかで見た顔です。そう、サミュエル・ジョンソン博士、英語辞典を編さんした人でした。この部屋の隅に座っていたとパブのスタッフが教えてくれます。ちょうど肖像画のあった場所なのでしょう。
このパブは文人やジャーナリストたちがよく訪れていたようです。18世紀半ばにサミュエル・ジョンソン博士が、19世紀半ばにはアルフレッド・テニスンとチャールズ・ディケンズ、マーク・トウェインが、19世紀後半にはコナン・ドイルが、時は違ってもこのパブのどこかに彼らはいました。そんな歴史あるパブのダイニングルームに、今の私たちがいます。
そして離れていた同じ年月と同じ年数を経て、同じ時間、同じ場所でまた会うことを約束します。さて誰がこのことを覚えていることでしょう。彼らはロンドン在住ですが、私たちは東京からやって来なければいけません。でもまた同じ年月を待ち、遠い先の約束があるのは楽しみになります。
でもさっきその年のカレンダーを見てしまいました。何とその日は日曜日。このパブの定休日です。それでもパブの扉の前で待っていましょうか。悩むところです。
※1階の奥は古色蒼然。私たちが座ったテーブルは窓側で自然光が入りました。この窓の曇り硝子がとても素敵でした。