Duchesse Bed~From the United Kingdom

2022.06.20

英国コラム

遠い昔、雨の午後たどり着いたヴィクトリア&アルバート博物館。ここには世界中の工芸、宝飾、絵画等の芸術作品が蒐集されています。夏のシーズンなのに、館内は混雑してはいません。と言うのもここに来る前に、隣の自然史博物館に入ったら、恐竜展で館内はたくさんの子どもたちであふれていました。恐竜展は長蛇の列。いっしょにいた友人は、恐竜を観たかったのですが、諦めてきたところだったのです。

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ヴィクトリア&アルバート博物館の中央の堂々たるエントランスから左に進みます。人もまばらな館内、長い回廊のような展示室。一瞬暗くなる場所もあり、ひとりでいたら怖かったかもしれません。今や大人気のヴィクトリア&アルバート博物館では、あり得ない閑散とした光景です。暗く湿った場所に入り込んでしまい、微かな黴の臭いがします。気がつくと、大きな天蓋付きのベッド、これがduchesse bed。その日観たものはウェアのベッドと呼ばれているもので、400年もの昔のものでした。

天蓋付きベッドを見ると、どんな大邸宅に住もうと、眠る時は小さな場所が落ちつくのだと思ってしまいます。天蓋付きベッドの英語名にはduchesse と付いています。これは公爵夫人の意味ですから、貴族の最高位の奥方のベッドというわけです。

昨年久しぶりに出かけたヴィクトリア&アルバート博物館は、大勢の人で賑わい、特にカフェは休憩する場所もないくらい大人気です。あの閑散とした館内が嘘のようです。それでも広大な館内は混み合うほどではなく、また天蓋付きのベッドを見つけました。以前観たウェアのベッドではないようで、シノワズリの装飾が施されています。これはThe Badminton Bed。このベッドも250年以上の前のもので、当時人気のあった中国の装飾を施し作られたそうです。バドミントンの名はベッドのあった邸宅が、バドミントンの発祥の地、バドミントンハウスだったからのようです。

しかし19世になると天蓋付きベッドは、白衣の天使ナイチンゲールにより不衛生な場所とされます。こもった環境は換気されず、空気を汚し、感染症の温床となります。ナイチンゲール自身もクリミア戦争で細菌に感染し、生涯を病と闘うこととなりました。というわけで天蓋付きベッドは次第に使われなくなっていったようです。