Bath~From the United Kingdom

2022.01.11

異文化理解

Bath
今回はイギリスの地名ではなく、お風呂のお話…

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昔の人たちはどんなお風呂に入っていたのでしょう。今では当りまえのように蛇口から湯水が出てきますが、かつてのお風呂事情のイギリスではどんなものだったかご紹介します。

映画「ダウントンアビー」では、突然バッキンガム・パレスから国王夫妻が、グランサム伯爵の館を訪れる報せから始まります。ヨークシャーのカントリーハウスの中では大変な騒ぎになります。しかしボイラーが故障し、お湯が出ません。元執事のカーソンは、お湯を沸かしてバスタブに入れればいいと言い張ります。「ダウントンアビー」のお話は20世紀初頭で、ボイラーからお湯が出る時代です。しかし19世紀のヴィクトリア時代の裕福な家続のお風呂は、全て自分の部屋。小さなバスタブ、ヒップバスと呼ばれるものに使用人たちがお湯を入れて使っていました。部屋は階上にあることが多く、使用人たちは何度も何度も沸かしたお湯を持って、階段を昇り降りするわけです。湯加減を調節し、ベストな状態のお風呂を用意します。髪を洗うことなどほとんどできなかったことでしょう。ヒップバスと呼ばれるだけあって、身体の一部分の洗浄だったと思われます。看護師ナイチンゲールの推奨により、週に1度ほどの入浴から毎日入浴する習慣も始まりつつあります。「清潔が病気の対策に最も有効」のナイチンゲールの言葉に、当時のスーパー主婦、イザベラ・ビートンも賛同します。「ビートン夫人の家庭読本」は当時の大ベストセラー。入浴の習慣は高まったものの、使用人たちのお湯運びの苦労、それはそれは大変なものだったでしょう。

今のイギリスでも、バスジェルを浴槽に入れてお風呂を済ませますが、洗い流しはしないようです。バスタオルで拭いて終り。なぜならバスジェルにはモイスチャー成分が入っているので、洗ってはもったいないそうです。日本とはまるで違うお風呂事情に驚きです。これも異文化理解ですから、郷に入っては郷に従え、というところです。

ちなみにこの古い時代には、おトイレも自分の部屋で済ませます。その時に使用するおまる、チェンバー・ポットのお話はまた別の機会にご紹介しましょう。そして今回書けなかったイギリスでのお風呂の入り方について。これはいろいろと苦労されている方、多いかと思います。それもまたの機会にご紹介しましょう。

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※写真はヴィクトリア時代と思しきドールハウスの室内と、猫脚のバスの猫