イギリスの花火は秋 なぜ秋に花火?? それはガイ・ファークス・ナイトだから… 

2021.09.14

異文化理解

イギリスの秋の終わり、冬の訪れを感じる季節に人々は花火で盛り上がります。花火は英語でfireworks。火で描かれたものと考える英語と、花のような火と考える日本語に、それぞれの趣を感じます。でも日本では花火は夏なのに、どうしてイギリスでは秋なのでしょうか。どうやらそれには理由がありそうです。

なぜイギリスでは秋に花火をするのでしょうか??

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イギリスの緯度は北極54度に位置し、日本は北緯20度から45度あたり。日本は南北にも細長い国なので、東京をマークすると北緯36度くらいになります。イギリスの首都ロンドンの緯度51度を日本近辺で当てはめると、最北端の稚内を越えて、ロシアの樺太付近の北。ロンドンをはじめヨーロッパは北に位置していることがわかりますが、イギリスの冬より東京の方が寒いくらいかもしれません。
しかしこの緯度、夏と冬で日照時間を大きく変えてしまうのです。ロンドンの6月の夏至の頃は10時くらいまで太陽は明るく、反対に12月の冬至の頃には3時には暗くなってしまいます。長い昼と長い夜のイギリスでは、夏の花火は向かなかったように思われます。さらに11月5日には歴史的な事件が起こっていたのです。

ガイ・フォークスは誰??



英語でナイスガイと、男性をほめる時に使う、ガイ。実はこれは人の名まえでした。それがガイ・フォークス。彼の名はイギリスの11月5日の代名詞となってしまいました。そのお話は…
エリザベス一世の時代が終わった矢先1605年、英国国教会とカトリック教でまたきな臭い問題が立ち上がっていました。崩御したエリザベス一世は英国国教会徒でしたが、即位したジェームス一世の母はカトリック教徒のメアリー・ステュワート。そうエリザベスとメアリーは宗教の違いから、縁続きでありながら、数奇な運命を辿っていましたね。でもメアリー・ステュワートの息子のジェームス一世は、カトリック教徒でありながらカトリック教を排除しようとします。反発したカトリック教徒たちがこれに対して、国会議事堂を爆破しようと企てますが、そのテロの首謀者がガイ・フォークス。彼は密告のため逮捕されてしまいます。
1605年11月5日の、「火薬陰謀事件/The Gunpowder Plot」は歴史的な日になり、この日は花火を上げ、かがり火を焚き、ガイの人形を作って引き回し、その人形をくべるようになりました。ガイ・フォークスは結局首謀者ではなかったようですが、絞首刑に処され、その名を後世まで残します。

クリスマスまでの暗くなる季節に向かうために

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11月は日に日に日没が短くなり、寂しくなる時期でもあります。11月5日のガイ・フォークス・ナイトは、その時期のイベントとして400年も続いているお祭りです。最初は国家の平和の祝日だったようですが、今は休日にはなっていません。それでも11月5日が近づくと、子どもたちはガイのぼろ人形を作り、その日を待ちます。“A penny for the Guy”と言ってガイの人形を見せて、「ガイに1ペニーちょうだい」とおこづかいをねだって回ります。まるでハロウィンのお菓子をねだるのと同じです。
花火が終わりに近づくと、そのガイの人形はかがり火に投げ込まれ、お祭りのクライマックスを迎えます。暗い夜を焦がしてゆくかがり火。火の輝きは希望につながります。こうして花火とかがり火のお祭りが終わると、次はクリスマスのイルミネーション。こうやって冬の輝きは引き継がれてゆきます。新年が来ればまた1日1日が明るくなって来ますから、それまでクリスマスを待ち続けます。イギリスの人たちは暗い冬をこうして過ごし、楽しいイベントを続けているのです。