Red Lion Square~From the United Kingdom

2019.10.01

英国コラム

Red Lion Square
19世紀のこと、大英博物館の近くにあるこの場所で、新しい力が生まれようとしていました。

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ロンドンにレッドライオンスクエアというところがあります。ここに若き芸術家2人が、かつて暮らしていました。
オックスフォード大学で学んでいたウィリアム・モリスとエドワード・バーン=ジョーンズ。それも美術ではなく、神学の勉強を2人ともしていたのです。それぞれ聖職者になろうとしていた時に、いきなりの方向転換です。

ラファエル前派に憧れ、画の世界を目指すことになった2人は、その中心人物の画家、ロセッティに会うことがかない、オックスフォード大学を中退してロンドンに出てきます。その時住んだのがレッドライオンスクエアのフラットです。
そこは元々ロセッティのアトリエだったところで、ロセッティは2人に部屋を明け渡しました。それが1856年のこと。そこで2人はどんな未来を語っていたのでしょうか。画を学びながら、働き、どんな夢を持っていたのでしょうか。
モリスは意匠家・工芸家、詩人としてその名を残し、バーン=ジョーンズはその美しい画力が認められ、准男爵の爵位まで授けられます。
そんな未来もつゆ知らず、2人はそれぞれの美を追求し、研さんを積んでいたレッドライオンスクエア。当時彼らが見上げただろうと思える大きな樹は、そんな彼らの様子を見ていたのですね。その場所に立って遠い日の彼らの姿を想像してみました。エネルギーに満ちあふれた、振り返れば愉しい時代だったと思われます。

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2人は生涯親友でした。さまざまな苦悩や愛憎も乗り越えて、1896年モリスが62才で没すると、バーン=ジョーンズは嘆き悲しみます。バーン=ジョーンズも2年後に64才で後を追うように他界します。

晩年の2人の写真が残っています。丸く体格の好いモリスと、痩せたバーン=ジョーンズの姿。真っ白い髪と髭になって歳を経ても、2人の目は輝いて見えます。まだ、何かし足りないぞ…そんな目で私たちを見つめています。