Pomp and Circumstance Marches~From the United Kingdom

2025.10.16

英国コラム

イギリスの作曲家エドワード・エルガーのこの行進曲、ご存知ですか? 英語になるとまるで知らない曲のようですが、力強く堂々とした行進曲は、パレードなどの定番の曲です。この曲の日本語のタイトルは「威風堂々」。イギリス王室絡みの番組などで、バックグラウンドミュージックとしてかかったりもしています。それもそのはず、このPomp and Circumstance Marchesは、イギリス王室のためにエルガーが作曲したものだったのです。

  • Pomp and Circumstance Marche~From the United Kingdom

1901年ヴィクトリア女王の長き治世が終わりを告げ、女王の長男のエドワード7世が国王になりました。59歳の国王は王室の発展のためにもっと公の場に出ることを考えていました。ヴィクトリア女王は夫君のアルバート公を亡くされた1861年の12月から、ずっと黒い喪服を着続け、国家の儀式も欠席し、社交界に顔を見せることもしなくなりました。本来なら皇太子に公務を引き継ぐところですが、それも許しません。王室への反感も高まるところでしたが、エドワード皇太子の病気と快復がきっかけで、ロンドン市内のパレードとセントポール大聖堂の感謝祭に登場することになったのです。

偉大な母親の跡を継いだエドワード7世は、国民のために王室の演出を考え出します。王室の華やかさを国民に見てもらうための道を整備します。バッキンガムパレスからトラファルガースクエアまで続くザ・マルをパレードの道にし、儀式の馬車が通ります。エリザベス2世のプラチナジュビリーの華やかなパレードは、2022年6月2日にもこのザ・マルを通りました。

そしてエドワード7世は人気の作曲家、エルガーに国王と女王を讃える曲を依頼、でき上がったのが「威風堂々」です。イギリス王室存続をかけてのこの曲のタイトルは、シェークスピアのオセロの第3幕- Pride, pomp, and circumstance of glorious war!(誇り、華やかさ、そして輝かしい戦争の状況!)-からとられていると言われています。

エドワード7世はイギリス王室の儀式を次々と整えていきますが、即位して9年後の1910年、重度の気管支炎のため68歳で逝去されます。短い治世でしたが、エドワード7世は威風堂々-Pomp and Circumstance Marchesで、華麗なる王室を色づけました。今でも続いているイギリス議会の開会式。毎年、君主は正装し大英帝国王冠を着け、馬車で議事堂に向かうことをエドワード7世は儀式として確立させ、君主の威厳を高めるための大きな功績を遺しました。

※写真はロンドン上空から見たザ・マル。英国王室の儀式ではバッキンガムパレスまで一直線のこの道をパレードします。