イギリスを舞台にした映画とドラマ71選Ⅰ-イギリス舞台の映画ドラマはまた違う魅力でいっぱい

2024.04.23

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アメリカ映画は「派手なアクション」、イギリス映画は「セリフの妙」と、書かれていた記事を読んだことがあります。例えば1994年公開の「フォーウェデイング」は6週間の期間で、その費用は300万ポンド未満。けれど予想外に大ヒットとなり、当時のイギリス映画史上最高の興行収入を記録したほどです。莫大な制作費と大スターと大きな仕掛けがなくても、好い映画は作れるという見本を示し、この映画でヒュー・グラントは注目され、その後の活躍につながっていきます。

イギリス映画とアメリカ映画。映画も人によっていろいろいな好みがありますから一概にどちらがいいとは言えません。でもあえてイギリスモノの映画やドラマをご紹介したいと思います。今回はイギリスが舞台のもの、イギリスの作家もの、イギリス人が描かれている映画を選んでみました。

独断で選んだ20世紀公開の映画、27作品をまずはご紹介していきましょう。

1945年から1999年

And Then There Were None そして誰もいなくなった 1945年

モノクロームの映画ですが、この物語には相応しい映像かもしれません。見知らぬ者たちが孤島に集められ、一人ひとりと殺されていくアガサ・クリスティの不朽の名作を映画化。アガサ・クリスティは舞台の島を、イギリス南部のデヴォンシャーにあるBurgh Island-バー島をモデルにしていますが、実際のこの島は干潮島で、潮が引けば歩いて渡れてしまいます。1945年の映画ではとても渡れそうにもない島で、そしてラストも原作とは違っています。
 

Lawrence of Arabia アラビアのロレンス 1962年

こんな絶世の美男子、この映画の主役に目を見張ります。実在のT.E.ロレンスを名優ビーター・オトゥールが演じ、壮大な歴史映画に仕上がりました。撮影の舞台はヨルダンですが、イギリス陸軍将校のロレンスがアラブの独立戦争で活躍したお話です。実はこれが今のパレスチナ問題につながってしまっています。ロレンスは後にアラブを裏切った祖国が授けようとしたナイト爵位を辞退。美しき英雄は1935年5月オートバイ事故でこの世を去りました。
 

James Bond films ジェームス・ボンド 007シリーズ 1962年~

イアン・フレミング原作のスパイ小説は1953年に発表されました。映画は1962年にショーン・コネリー主演で第1作が公開され、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、ダニエル・クレイグの名優たちがジェームス・ボンドを演じています。レーゼンビーとダルトンはそれぞれ1作と2作でボンド役を降板してしまいましたが、演じるのが大変だったようです。ダルトンは後に、「映画会社とプロデューサーがもめて制作中止になり、もうやりたくなくなった」とコメントしていました。
 

Mary Poppins メリー・ポピンズ 1964年

1964年のこの作品はジュリー・アンドリュースの第2作目の映画で、この作品でアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。ディズニーの実写映画版の撮影はアメリカのスタジオで行われましたが、舞台はイギリス。ジュリー・アンドリュースは典型的なイギリスのナース―乳母を演じていますが、メリー・ポピンズは魔法を使います。やって来たバンク家で、子どもたちを時には厳しく時には優しく接していました。「チムチムチェリー」他、名曲とともに楽しめる名作です。
 

A Hard Day's Night ハード・デイズ・ナイト 1964年

1964年公開当時の邦題は何てベタな、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」 でした。人気絶頂のビートルズが本人たち役で出演、追いかけるファンたちから逃れるシーンは、実際にロンドンのマリルボーン駅で撮影されています。モノクロームの映画がかえってリアルな世界に映るから不思議です。ビートルズの「ハード・デイズ・ナイト」の曲とともに名作映画となりました。ちなみに映画公開時のイギリスのポスター、これがとても素敵です。メンバーの顔を半分隠し、エアメールの切手のように作られていました。
 
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My Fair Lady マイ・フェア・レディ 1964年

舞台はロンドンのコヴェントガーデンなのですが、映画はハリウッドのスタジオ撮影のようです。元々は舞台のミュージカルでしたが、1964年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化されました。アスコット競馬のシーンがスタジオのため、臨場感がないのがちょっと残念ですが、1963年8月から12月の限られた撮影期間に無理があったようです。それでもオードリー・ヘプバーンの町娘でも輝くような美しさ、訛りのひどい労働者たちの英語が、RP (Received Pronunciation―容認発音)のレディになるまでのストーリーは見応えがあります。
 

Romeo and Juliet ロミオとジュリエット 1968年

まさにロミオ、まさにジュリエットのキャスティングでした。当時16才のオリヴィア・ハッセーと17才のレナード・ホワイティングが理想的なロミオとジュリエットのアイコンとなり、イタリアの巨匠フランコ・ゼフィレッリ監督が悲しくも美しい映画に仕立てました。シェイクスピアの原作の主人公たちの年齢に近い役者をキャスティングし、等身大のロミオとジュリエットを描きました。そしてニノ・ロータの名曲も甘く切なく、この映画を盛り上げています。
 

Goodbye, Mr. Chips チップス先生さようなら 1969年

小学校の時図書館で目に留まった「チップス先生さようなら」の本。それがピーター・オトゥール主演で映画化されていました。1939年にも映画になっていましたが、ミュージカル映画となって再映画化されました。とても長い映画なので休憩時間が設けられている大作です。イギリスのパブリックスクールと教師チップスことチッピングの長い時間のお話は、イギリスでロケされていて当時の様子を垣間見ることができます。また「アラビアのロレンス」のピーター・オトゥールが、チップス先生を演じているのも見所です。
 
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Anne of the Thousand Days 1000日のアン 1969年

名優リチャード・バートンがヘンリー8世を演じた1969年の映画。イングランド王として1509年に即位したヘンリー8世は、6人のお妃を持ち、そのために宗教改革までしてしまった希代の君主です。2番目の妃アン・ブーリンは、後のエリザベス1世の母親。最初の妃キャサリン・オブ・アラゴンの侍女でしたがヘンリー8世に見初められたことで、その運命が変わってしまいます。古い映画ですが、アンを演じたカナダ人女優、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドの際立った美しさが素敵です。
 

Melody 小さな恋のメロディ 1971年

この映画はイギリスではウケなかったようですが、日本では主演のマーク・レスターが大人気になった映画です。原題の「メロディ」はヒロインの名ですが、わかりづらいので邦題を「小さな恋のメロディ」としたのでしょう。子どもたちの目線で描かれたこの作品の大人は脇役です。トムを演じたジャック・ワイルドの悪ガキぶり、ダニエル役のマーク・レスター、メロディ役のトレーシー・ハイドとキャスティングもとても素敵な映画です。ビージーズの「メロディフェア」の名曲もこの映画から生まれました。
 

A Clockwork Orange 時計じかけのオレンジ 1971年

名匠スタンリー・キューブリック監督の異色作の舞台は近未来のイギリス。ドラッグ入りミルクを飲むところから映画は始まります。暴力と殺人、性的なシーンの過激さで公開当時は論争を呼びますが、カルトクラシックの名作となって残っています。この映画で使われているタイトル曲も秀逸です。映画のオープニングで17世紀イギリスの作曲家ヘンリー・パーセルの、「女王メアリー二世のための葬送曲」をシンセサイザーでアレンジして、独特の世界を演出しました。
 

Chariots of Fire 炎のランナー 1981年

陸上選手たちを描いた「炎のランナー」の舞台は1924年のパリオリンピック。イギリスのエリック・リデル選手は100メートル競技の予選が日曜日だと知り、出場をとりやめてしまいます。スコットランドの宣教師の息子のリデルは、安息日の日曜に競技に出ることはできません。日曜は礼拝を行う日。何もしてもいけないのです。オリンピックで金メダルを獲ることよりも信仰を選んだリデル。そして陸上選手たちの実話は、素晴らしい名曲とともに映画史に残りました。
 

A Christmas Carol クリスマスキャロル 1984年

クリスマスキャロルはイギリスの文豪、チャールズ・ディケンズの名作。それをドラマ化した1984年の作品を観ました。アメリカの俳優ジョージ・C・スコットが主人公のお金持ちでケチな老人、スクルージを好演しています。クリスマスには必ず放送される「クリスマスキャロル」のお話はお金だけが大切ではないこと、それをスクルージの体験を通して教えてくれます。お金はないけれど温かい家庭のあるクラチットに、クリスマスのご馳走を贈るまで改心させてしまう、精霊たちのプレゼンテーションも見所です
 

A Room with a View 眺めのいい部屋 1986年

イギリスの小説家エドワード・モーガン・フォースターの小説を映画化。プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」から「私のお父さん」の名曲が効果的に使われています。20世紀初頭の古き佳き時代、イギリスの良家の子女ルーシーのイタリアフィレンツェでのお話は、主人公を若き日のヘレナ・ボナム=カーターが美しく演じています。またルーシーの従姉をマギー・スミス、小説家役でジュディ・デンチと、イギリスを代表する女優たちが共演しています。第59回アカデミー賞最多8部門にノミネートされた名作です。
 

Northanger Abbey ノーサンガー・アビー 1987年

ジェーン・オースティン原作のゴシック小説の「ノーサンガー・アビー」は、古い屋敷の秘密や謎を想像する夢みる少女のお話。18世紀から流行した神秘的で幻想的なゴシック小説、主人公の少女もその小説の愛読者でした。けれど現実にはそんなことはなく、少女が期待していることは何も起こらなかったというパロディーものぞかせてくれました。このドラマはイギリスの公共放送BBCが制作したテレビ用ものだったようです。
 

The Remains of the Day 日の名残り 1993年

ノーベル賞作家カズオ・イシグロ原作の「日の名残り」の映画化した作品です。世界の高名な人たちが集う大きな屋敷で執事を務めるスティーブンス。いつも執事としての品格を保ち、持ち主が変わっても屋敷を守り続ける姿を名優アンソニー・ホプキンスが好演しています。ラストシーンで鳩が屋敷に舞い込み、現当主とともに外に逃がすシーンが印象的でした。あれは屋敷から自由になっていく使用人たちの姿だったのでしょうか。共に働き信頼していた、ミス・ケントンのここでの時間だったようにも思われました。
 
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Four Weddings and a Funeral フォーウェデイング 1994年

邦題は「フォーウェデイング」ですが、原題にはFuneral-葬式もついています。友人たちの結婚を通して結婚は何かと考えてしまう主人公、その結婚式の1つで友人を亡くし葬式まで参列することになってしまいます。優柔不断な主人公詰が4つめの結婚式でやってしまうこと、それは残念ながら感心できることではありませんが… 後に名作を創り続けることになる脚本家リチャード・カーティスとヒュー・グラントの最初の作品がコレ。ヒューと同居人のスカーレット役のシャーロット・コールマン、彼女が若くして病死されたのはとても残念です。
 

The Madness of King George 英国万歳! 1994年

ジョージ3世はその在位期間が60年近くある国王でしたが、晩年認知症を患っていたました。元々この映画は舞台で上演されていたもので1994年に映画化されました。ジョージ3世とシャーロット王妃は仲睦まじいご夫妻、けれど皇太子のジョージは放蕩息子で問題児。なかなか王位を譲れない事情もあり、そのうえ国王が呆け始めたのですから大変です。シャーロット王妃をイギリス人女優のヘレン・ミレンが好演し、カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞しています。
 

Sense and Sensibility いつか晴れた日に 1995年

今やイギリスを代表する俳優になった、ヒュー・グラントとエマ・トンプソンの若き日の映画です。ジェーン・オースティン原作の「Sense and Sensibility-分別と多感」で、エマ・トンプソンは脚色も手がけ、アカデミー賞の最優秀脚色賞を受賞しています。3人の貴族の娘たちは、ほとんど残されなかった遺産で暮らすしかないのですが… ハリー・ポッターシリーズのスネイプ先生役のアラン・リックマンの若き姿と、「タイタニック」で主演する前のケイト・ウィンスレットも見所の映画です。
 
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Braveheart ブレイブハート 1995年

スコットランド独立のために戦ったウィリアム・ウォレスの歴史映画で、メル・ギブソンが主演、制作、監督を務めています。ウィリアム・ウォレスはイングランド軍に捕まり、非業の死を迎えることになりますが、スコットランドの英雄としてその名を残します。映画の演出上史実とは異なるところも多々ありそうです。例えばソフィ・マルソー演じるイングランド王妃イザベラは、夫を亡きものにした「フランスの雌狼」と呼ばれ、この映画のようなロマンスはけしてなかったでしょうが、メル・ギブソンの熱演に圧倒されていまいました。
 

Trainspotting トレインスポッティング 1996年

ユアン・マクレガー主演のこの映画はヘロイン中毒の若者たちのお話。1999年20世紀の偉大な映画ベスト10位に、また2011年イギリスのタイムアウト紙調査でもベスト10位にランクされました。薬物がテーマで、登場人物が中毒者ばかりなので立ち位置が微妙な作品ですが、人気はとても高く何度も観る人も続出しているとか。舞台のスコットランド英語を聴き取るためスラングや、仲間うちの隠語にもはまってしまうという作品です。2017年には続編「T2 トレインスポッティング」も公開されました。
 

Emma Emma/エマ 1996年

ジェーン・オースティンの小説「エマ」を1996年に映画化し、主役はグウィネス・パルトローが演じています。このお話は何度も映画化され、2020年にもアニャ・テイラー=ジョイ主演の映画が公開されています。主人公のエマ・ウッドハウスが愛されている証拠なのでしょう。1996年のエマは、若き日のグウィネス・パルトローの透き通るような美しさも素敵です。前年に映画「セブン」で注目されたパルトローが大女優の道を歩み始めた頃の作品です。
 

The Wings of the Dove 鳩の翼 1997年

ヘンリー・ジェイムスの名作を映画化したこの作品で、ヘレナ・ボナム=カーターは主役のケイトを演じています。ロンドンの地下鉄で映画は始まり、駅構内のリフトでの妄想のようなラブシーンから、突然家の中で後見人となった叔母との現実的な会話へ。叔母はケイトを貴族に嫁がせようと厳しく監視しています。時代は1910年。若き日のヘレナ・ボナム=カーターの美しさと強かさが見事です。そしてお話は意外な三角関係へと進みます。ベニスを旅する3人の美しい姿も印象的な映画でした。
 

Mrs. Brown Queen Victoria 至上の恋 1997年

ヴィクトリア女王は夫君のアルバート公と死別してから、公式行事に姿を現さなくなります。周囲はこれではいけないと策を弄し、アルバート公の信頼を得ていたジョン・ブラウンをヴィクトリア女王の元へ使わします。ジョン・ブラウンは形式にとらわれない誠実な仕事ぶりで女王を支えますが、けれど一向に女王は公務には復帰しません。やがて女王は「Mrs. Brown」と揶揄されます。この実話が元になって映画の原題になりました。ヴィクトリア女王をジュディ・デンチが演じていますが、この役はまだこの先も続きます。
 
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Shakespeare in Love 恋におちたシェイクスピア 1998年

世界に誇る文豪ウィリアム・シェイクスピアの時代のお話は、出演者のすごさに驚かされます。主人公2人に加えて、後の名作「英国王のスピーチ」の主演と助演のコリン・ファースとジェフリー・ラッシュ、「Queen Victoria 至上の恋」と「ヴィクトリア女王 最期の秘密」の女王役、007シリーズのM役のジュディ・デンチ、ハリー・ポッターシリーズのドローレス先生役のイメルダ・スタウントンたちが好演して、シェイクスピアを主人公にして楽しく彩っています。
 

Elizabeth エリザベス 1998年

父ヘンリー8世と2番目の妃アン・ブーリンとの間に生まれたエリザベス1世。母は父の次の妃のために刑場の露と消え、悲しい少女時代を過ごしました。ロンドン塔にも幽閉されましたが、姉の死により王位を継ぐことになります。在位44年と4カ月の在位期間にはあまりにも血なまぐさいことばかり起きます。若きエリザベス1世から戦う君主としての晩年を演じたのはケイト・ブランシェット。髪を切り落とし、イングランドのために戦う凄みを感じさせてくれる演技でした。
 

Notting Hill ノッティングヒルの恋人 1999年

ロンドンの住宅街ノッティングヒル。そこに暮らす人々とハリウッドの大女優が突然で出会ったお話です。リチャード・カーティスとヒュー・グラントの第2作目のこの映画は大ヒットしました。リチャード・カーティスのウィットにあふれた脚本の秀逸さに感服する作品です。映画を観た後、この英語の脚本も買って読み続けたほどです。イギリス英語も楽しめ、イギリスを代表する役者たちの演技も最高の映画になりました。「ダウントンアビー」のクランサム伯爵のヒュー・ボネヴィルも、ノッティングヒルの人々としてこの映画にキャスティングされています。

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