Come and visit TATE BRITAIN ロンドンのテートブリテンへ行ってみませんか
2023.09.20
英国史雑学
英国の画家と作品をどのくらい知っていますか?
最初に絵画を見た時の無垢な感動。それを大切にして美術館に足を運んでみましょう。
ここではロンドンにあるテート・ブリテンが収蔵する作品をご紹介します。
The British Channel Seen from the Dorsetshire Cliffs
ジョン・ブレットは風景の中にテーマを落とし込んでいます。風景画から入り、後年ラファエル前派の画家ウィリアム・ハルマン・ハントの理想、写実的な自然描写を目指すようになります。▶自然と人とを描く画家
動物たちの骨を割る少年を描いた「The Stonebreaker」の世界でも、精密で鮮やかな美しい自然を描いています。動物たちの骨は骨灰となって磁器に強度を増します。ボーンチャイナと呼ばれる磁器のボーンは骨の意味。穏やかで美しい空の下、生きているのは少年と子犬だけ。かつて生きていた多くの骨たちに囲まれる石割りの不思議な絵です。▶不思議な時間の不思議な海
今回はジョン・ブレットの40才の作品をご紹介しましょう。人生の半ばを過ぎたブレットが描く、穏やかな海の風景です。高い崖の上から見た景色は英国の南西部のドーセットの海。水平線と空、波の静かな海面に、雲間からこぼれる陽の光が注ぎます。日本語で「天使の階段」と呼ばれる光が海に降りてきます。ただしこの光線は陽のさす角度が低い秋や冬に起こることが多いので、この画の不思議な感覚は何でしょう? 黎明とも黄昏とも見える空の色、春にも夏の終わりにも見える季節感。そう、この世の景色ではないのかもしれません。その海に漂う小舟の影。天使の階段を昇るために、光の輪に漕ぎ進んでいるようです。心にある風景をブレッドは描いたのでしょうか。このChannelという言葉には水路、海峡という意味もありますので、タイトルは「ドーセットシャーの崖から見えた英国の海峡」と訳せます。タイトルに場所の記載しかないのに、心象風景に見えるこの油彩画はロンドンのテート・ブリテンにあります。
The British Channel Seen from the Dorsetshire Cliffs
John Brett(1831-1902)